日帰り登山を始めてみたいけれど、何を持って行けばいいのか迷ってしまう…そんな初心者の方に向けて、必要な持ち物をやさしく解説します。
絶対に必要な装備から、あると便利なプラスαまで、チェックリスト形式でご紹介。安全で快適な登山デビューをサポートします。
基本装備:これだけは絶対に!
登山に欠かせない基本装備を4つご紹介します。これだけは忘れずに準備して、安全で快適な山歩きを楽しみましょう。
登山靴
登山道は舗装されていない不整地がほとんど。街歩き用のスニーカーでは滑ったり、足をひねったりする危険性があります。露出した岩につま先をぶつけることもあります。
登山初心者には、足首までしっかりホールドしてくれる「ミッドカットタイプ」の登山靴がおすすめです。つま先が堅い素材でガードされているタイプであれば、足先まで守ってくれるので安心です。
足のサイズ+0.5~1cmほど余裕があると、下り坂でもつま先が圧迫されにくく快適。試着の際は厚手の登山用靴下を履いて確認しましょう。最初は軽量タイプを選ぶと足への負担も少なく、登山の楽しさを感じやすくなります。
登山用靴下
登山靴とセットで重要なのが靴下選びです。普段使いの綿の靴下では、汗を吸っても乾きにくく、足を冷やしたり、靴擦れの原因になることも。
登山には吸湿速乾性に優れた素材で、厚みがありクッション性の高い登山専用靴下が最適です。夏でも薄手すぎるものは避け、長時間の歩行に耐えられる厚手タイプを選びましょう。
当日履いていく1足だけでなく、替えの足もザックに忍ばせておくと安心です。登山中に使わなくても下山後に履き替えることもでできます。
ザック(20〜30L)
日帰り登山には、容量20〜30リットル程度のザックが適しています。お弁当や飲み物、雨具などを無理なく収納できるサイズ感で、軽くて背負いやすいものを選びましょう。
背面メッシュ構造で通気性があると汗がたまりにくく、快適に歩けます。チェストベルトやウエストベルトがついていると、荷物の揺れを防いで安定性が増します。
登山用ザックはカラーバリエーションも豊富なので、好みの色を選べば気分もアップ!ただし、自分の体型とのフィット感重視で選ぶのが大切です。


ザックカバー
突然の雨に備えて、ザック全体を覆えるザックカバーも忘れずに準備しましょう。ザックに内蔵されているものもありますが、別売りの場合は必ずサイズを確認して購入を。
防水性はもちろん、軽量でコンパクトに収納できるタイプが便利です。派手な色のカバーを選べば、悪天候時でも目立ちやすく、安全性の向上にもつながります。

快適に歩くためのウェア&レイヤリング
登山では体温調節が重要です。天候や標高の変化に対応できるよう、レイヤリング(重ね着)を基本にしたウェア選びを意識しましょう。
ベースレイヤー(インナー)
肌に直接触れるベースレイヤーは、汗をすばやく吸収し、乾かしてくれる素材を選ぶのがポイントです。ポリエステルやウール混の速乾性インナーがおすすめ。
夏場はメッシュ構造で通気性のあるタイプ、春や秋は保温性を兼ね備えたものを選ぶと快適です。登山中は汗をかくため、替えのインナーを1枚持っていくと安心できます。
綿素材は汗を吸ったあとに乾きにくく、体を冷やしてしまうため不向きと言われています。ただし、敏感肌の人や汗をかいた後のニオイが気になるという人の場合は、綿素材でもかまわないでしょう。
着替えを多めに2〜3枚持っていけば、山頂や下山後に着替えられます(着替える場所はなく、大自然の中で着替える必要はありますが…)。
ミドルレイヤー(フリースなど)
ミドルレイヤーは、体温を保ちつつ汗を外へ逃がす役割を持ちます。登山初心者には、軽くて暖かいフリース素材が扱いやすくておすすめです。真夏の低山の場合はレインウェアで代用できるので不要かもしれません。
朝晩の冷え込みや標高の高い場所では、薄手でも1枚あると重宝します。着脱しやすいジップタイプだと、行動中の体温調整もしやすくなります。寒さに弱い方は、少し厚手のミドルレイヤーを持参しておくと安心です。
アウター(レインウェア)
突然の雨や風から身を守るレインウェアは、日帰り登山でも必携アイテムです。上下セパレート型で、透湿性・防水性に優れた素材(例:ゴアテックスなど)を選ぶと快適。
ワンピースのように着られるポンチョタイプは軽量ですが、風にあおられやすく、動きづらい場合があります。山頂や稜線では、低山でも風雨が激しく風にあおられてしまう危険性もあるので、セパレート型が必須です。
登山専用モデルはコンパクトに収納でき、軽量、ザックの中でもかさばりにくいのが魅力です。山の天気は変わりやすいため、晴れ予報でも持っていきましょう。


防寒着(ウィンドシェルなど)
標高の高い場所や季節の変わり目では、風よけや保温のために防寒着が必要になります。おすすめは軽量コンパクトなウィンドシェルや薄手のダウンジャケット。
ウィンドシェルは風を防ぎつつ、適度に湿気を逃してくれるため、汗冷えを防ぎながら快適に過ごせます。春や秋はもちろん、夏の高山でも急な冷え込みに対応できるよう、1枚は持参しておくと安心です。
ただ、登山・アウトドア専用モデルのレインウェアがあれば、ウィンドシェルの代わりになります。
安全対策アイテム:万が一に備える

登山は自然の中で行うため、予期せぬトラブルにも備えることが大切です。「万が一」に備えた装備で、より安心な山歩きを心がけましょう。
ヘッドライト
日帰り登山でも、日が暮れてしまったり、予定外のトラブルで下山が遅れることがあります。そんなときに備えて、両手が空くヘッドライトは必ず持参しましょう。
スマホのライトでは心許なく、バッテリー消耗が激しくなるので、専用の登山用ヘッドライトが理想です。防水性能があるものや、軽量・長時間点灯できるモデルを選ぶと安心です。
普段の生活では防災用にも流用できるので、1つはそろえておいても損はありません。

予備電池
ヘッドライトやGPS機能付きのスマホなど、電池を使う機器は山では生命線となります。
寒さや長時間の使用で電池残量が急激に減ることもあるため、対応する予備電池(または予備バッテリー)は忘れずに準備しておきましょう。充電式タイプでも、モバイルバッテリーがあれば安心感がアップします。
ヘッドライト同様、普段の生活にも使えます。

地図(紙)
スマートフォンの登山アプリは便利ですが、電波が届かない山中では使えないこともあります。万が一のバッテリー切れにも備えて、紙の地図を持っておくことが重要です。
山岳地図(例:昭文社の「山と高原地図」シリーズなど)は、登山道の情報が詳しく、初心者にもわかりやすいのでおすすめです。
コンパス
地図とセットで使いたいのがコンパスです。とくに登山に慣れていないうちは、「地図があればOK」と思いがちです。
しかし、方向感覚を補助してくれるコンパスがあると、迷いやすい分岐点などで大いに役立ちます。シンプルなベースプレート型のもので充分ですので、ぜひ一緒に携帯しておきましょう。

登山計画書
登山届・登山計画書は、自分の行動予定を記した「もしもの時の命綱」です。提出は義務ではありませんが、家族や友人に伝えるだけでなく、登山ポストを通じて提出しておくと、万が一の遭難時に迅速な対応が期待できます。
内容は簡潔でも大丈夫。出発・下山予定時刻、ルート、同行者などを明記しましょう。
登山届は登山道の入口に小さなポスト状に設置されているか、登山客が多い場所であればビジターセンターなどに設置されています。
携帯電話・モバイルバッテリー
登山中も連絡手段は必須です。電波が通じにくい場所もありますが、GPS機能や緊急時の連絡用として携帯電話は常に携行を。
また、スマートフォンの電池は想像以上に減りやすいため、モバイルバッテリーを1つ持っておくと安心です。軽量で1回分以上充電できるタイプはおすすめです。

健康保険証のコピー
ケガや体調不良などで医療機関にかかる可能性もゼロではありません。そのときに備えて、健康保険証のコピーを防水袋やジップロックに入れて持参しましょう。財布に入れたままでは取り出しにくいので、応急セットと一緒にしておくとスムーズです。
【事前加入】アウトドア保険・登山保険・遭難保険
コンビニやスマホから申し込めるアウトドア、ハイキング向けの保険が複数あります。万が一、登山中に遭難したときの捜索費用、ヘリコプター費用、ケガをして入院したときの費用などをカバーしています。
月額・年払い・指定日数だけ、遭難時の費用だけなど、自分に合った保険を選べます。日帰り(1日だけ)であれば数百円で加入できるので、お守りと思って加入しておくのがおすすめです。
行動中の栄養補給と水分補給
登山中は思った以上に汗をかき、エネルギーも消費します。体力維持と熱中症予防のために、水分と栄養の補給はこまめに行いましょう。
水筒・ハイドレーション・ソフトウォーターボトル
水分補給は最も重要な行動のひとつです。日帰り登山では1〜1.5リットルを目安に持参しましょう。
500ミリペットボトルでもかまいませんが、山行中にすぐ飲めるように、ハイドレーション(チューブ付きの水袋)をザックにセットすると便利です。ソフトウォーターボトルであれば、丈夫な厚手のビニール素材でできていて、使い切ったあとにくるくる丸めて収納できます。
また、気温や季節に応じてスポーツドリンクや温かいお茶を使い分けると快適に過ごせます。サーモスなど保冷と保温の両方の使い方ができるボトルであれば普段使いもできます。ただし、炭酸やスポーツドリンクには対応していないボトルもあるので注意しましょう。


行動食(おやつ)
歩きながら手軽にエネルギーを補給できる「行動食」は登山の必需品です。
おすすめは、チョコレートやナッツ、ドライフルーツ、ようかん、カロリーメイトなど。個包装タイプなら衛生的で食べやすく、ポケットにも収納しやすいので便利です。
休憩ごとに少しずつ食べることでエネルギー切れを防ぎ、バテにくくなります。甘いものばかりでなく、ハッピーターンのように塩分のあるスナックも適度に加えるとバランスが良くなります。
また、オレンジなどのフルーツも昼食後のデザートにおすすめ。アウトドア用の折りたたみナイフも用意しておけば、山頂でオレンジを皮ごとカットして、みずみずしいままの果汁を食べてリフレッシュできます。



非常食(緊急用)
万が一の事態に備えて、通常の行動食とは別に「食べずに済むなら使わない」非常食を1食分用意しておくと安心です。
コンパクトで賞味期限の長い、ようかん、ゼリー飲料、ビスケット、カロリーバーなどが適しています。ザックの底に入れておき、通常の補給とは分けて管理しましょう。非常時に落ち着いて行動するためにも、こうした備えが重要です。
チョコレートコーディング系のものは、ザックの中に入れているうちに温度でドロドロに溶けてしまうので、避けたほうがいいでしょう。

あると便利&プラスαの装備

登山の快適さや安心感をグッと高めてくれる「プラスα」の装備をご紹介します。余裕があれば、ぜひ取り入れてみてください。
タオル
吸水性の高い速乾タオルは、汗拭きや手洗い後の拭き取りに大活躍。首に巻けば日よけや防寒にもなり、1枚あると安心です。
軽くてすぐ乾く登山用のタオルは、荷物の邪魔にもなりません。コンパクトに折りたためるタイプを選ぶと便利です。
下山後に温泉に立ち寄る場合には、入浴時のタオルにも流用できます。
ティッシュ・ウェットティッシュ・携帯トイレ
トイレや食事、手の汚れなど、さまざまな場面で活躍するティッシュ類も必携です。ウェットティッシュは水場のない山中での手拭きに便利です。除菌タイプを選ぶとより衛生的。
紙製のティッシュは、濡れないようジップロックに入れて持ち歩きましょう。トイレットペーパーの芯を抜いて、横からぎゅっと軽くつぶしておくと収納時にコンパクトにできます。

ビニール袋・ジップロック
濡れたものの収納、ごみの持ち帰り、急な雨対策など、ビニール袋やジップロックは使い道が豊富です。大小さまざまなサイズを数枚用意しておくと非常に便利。特にジップロックは中身が見えるため、薬や小物の仕分けにも役立ちます。
普段使っているゴミ収集用の30リットル、40リットルゴミ袋も活用できます。ザックに装備を収納する前に、ザックの内側を40リットルのゴミ袋で覆っておけば、防水対策にもなります。
サングラス
山では日差しが強く、照り返しもあるため、サングラスで目を守ることも大切です。
紫外線対策はもちろん、まぶしさを軽減することで疲労も減らせます。偏光レンズタイプなら、地面の凹凸も見やすくなり、安全な歩行につながります。
日焼け止め
登山中は顔や腕、首などが長時間日差しにさらされます。紫外線は標高が上がるほど強くなるため、SPF値・PA値ともに高い日焼け止めをこまめに塗り直すのがポイントです。
SPF50以上、汗や水に強い「ウォータープルーフ」タイプがおすすめです。

救急セット
軽いケガに備えて、最低限の救急セットも持参しましょう。絆創膏や消毒液、テーピング、鎮痛剤などをコンパクトなポーチにまとめておくと便利です。
靴擦れ対策として「貼るタイプの保護パッド」もあると安心です。事前に中身を確認し、使用期限が切れていないかもチェックしておきましょう。
わざわざ登山用の救急セットを買うのではなく、必要な物・量だけドラッグストアや100円ショップで買いそろえる方法のほか、普段常備しているものを登山用にするだけでOKです。

トレッキングポール(ストック)
脚への負担を軽減し、バランスを取りやすくするのがトレッキングポール(登山用ストック)です。必須アイテムではなく、補助ツールとして愛用する人も多くなっています。
初心者には下り坂で特に効果を実感しやすく、膝の痛みを防ぐ助けになります。折りたたみ式や伸縮式の軽量モデルなら、使わない時もザックに取り付けられて邪魔になりません。
安全にかかわるアイテムのため、できるだけ信頼できるメーカーのものから選ぶのがおすすめです。下山時には体重の何倍もの負担がポールにかかります。場合によっては加重で折れてしまう危険性もあるので、できれば有名なアウトドアメーカーのものがいいでしょう。
最終チェックリスト&パッキング術
忘れ物を防ぎ、当日の準備をスムーズにするために、最終チェックとパッキングのコツを押さえておきましょう。
【日帰り登山 持ち物チェックリスト】
出発前の最終確認に役立つ、持ち物チェックリストを活用しましょう。以下の表に✔を入れながら荷物をまとめると、忘れ物も防げます。
- 登山靴
- 登山用靴下
- ザック(日帰り向き:20〜30L)
- ザックカバー
- ベースレイヤー(インナー)
- ミドルレイヤー(フリース等)
- レインウェア
- 防寒着
- ヘッドライト
- 予備電池/モバイルバッテリー
- 地図・コンパス
- 登山計画書(登山口などの専用ポストで提出)
- 携帯電話
- 保険証のコピー
- 水筒・飲み物
- 行動食/非常食
- タオル
- ティッシュ・ビニール袋
- サングラス/日焼け止め
- 救急セット
- トレッキングポール(必要に応じて)
【パッキングのポイント】
アイテムをザックに入れるときのパッキングのポイントを整理しましょう。
- 重いものは背中側の下部に入れて、重心を安定させましょう
- 雨具や防寒着はすぐ取り出せる上部ポケットへ
- 食料・水分はバランスよく左右に分けて収納
- 小物はスタッフバッグなどで分類すると便利です
あなた流の快適登山へ出発!
登山を始める第一歩として、まずは持ち物をそろえることが大切です。今回ご紹介したチェックリストをもとに、自分の体力や行き先、季節に合わせて少しずつ装備をアレンジしてみましょう。
慣れてくると「これは必要」「これは不要かも」と自分なりの最適解が見えてきます。最初は不安があっても、しっかり準備すればきっと自然の中でのひとときを楽しめるはずです。
安全第一で、自分らしい登山スタイルを育てていきましょう。